経済的な事情で学びを諦めることのないように
国私の別なく意欲ある学生へ支援
1.給付型奨学金の創設に向けた要望と実現
国立大学に高所得層の学生が、学費の高い私立大学に中間・低所得層の学生が多く在籍するという「ねじれ現象」の中で、私立大学は独自の奨学金や授業料減免による支援を重ねてきた。同時に私大連は、国に対し「国私」という枠組みではなく「個人」の経済状況に着目した修学支援への転換と、返還義務のない「給付型奨学金」の創設を強く要望してきた。
従来の日本の奨学金は貸与型が中心であり、若年層の低所得化による毎月の返還負担や、近年の金利上昇に伴う返還総額の急増が深刻な社会問題となっている。こうした私大連の働きかけや問題意識が後押しとなり、2018年、経済的に困窮する学生を国が返還不要で支援する「給付型奨学金制度」が創設されるに至った。
2.高等教育の修学支援新制度の実現と私大連の主張
2020年、授業料減免と給付型奨学金を柱とする「高等教育の修学支援新制度」が開始された。高等教育へ多額の国家予算が措置されたことは歓迎すべきである一方、本制度は低所得者層に対し、国立大生には実質無償化を適用するが、私立大生には約70万円の支援にとどまるなど、国私間の格差をさらに拡大させる懸念を内包していた。
私大連は、国私間における公財政支出や学生納付金の格差を是正しないまま現行の減免措置等を拡充すれば、従来の私立大学向け授業料減免の公的支援対象者が縮小し、国私間の公財政支出格差(=納税者間の不平等)がさらに深刻化しかねないと指摘。大学の設置形態に捉われず、学生一人ひとりの能力と経済的事情に応じたきめ細かい支援体制の構築を強く主張した。
さらに、新制度の減免対象が授業料のみに限定され、「施設・設備費」などが除外されている点も大きな課題である。私大連は支援対象を中間層まで拡大することを含め、実効性のある制度改正を引き続き求めている。
3.授業料後払い制度の創設
私大連はかねてより、在学中の家計負担を解消し、卒業後の所得に応じて授業料を納付する仕組みへの転換を提唱してきた。2018年には日本私立大学団体連合会において「『人づくり』を支える高等教育財源のあり方」を取りまとめ、オーストラリアのHECS(高等教育拠出金制度)を参考に日本版の「高等教育機会均等拠出金制度」を提案した。これは、在学中は授業料を徴収せず、卒業後に一定以上の所得を得た段階で拠出を求める、いわゆる「出世払い」型の財源構想である。
この先進的な提言は、2024年度から開始された大学院修士段階(博士前期課程)を対象とする国の「授業料後払い制度」として具現化し、経済的理由による進学断念を防ぐ門戸拡大への確かな一歩となった。
4.中間層への支援とこれからの修学支援
低所得層への修学支援制度が拡充される一方で、支援対象から外れる中間層の負担は重い。2020年の「高等教育の修学支援新制度」の開始に伴い、それまで私学助成で措置されていた「授業料減免事業等支援」が廃止されたことで、新制度の対象外となった所得中間層への公的支援は事実上消失した。しかし、多くの私立大学は中間層への減免措置を継続せざるを得ず、大学独自での支援を余儀なくされている。その支出総額は2024年度で約930億円に達しており、大学経営を圧迫する一因となっている。
近年、国は中間層への支援を段階的に広げつつあるものの、その対象は理工農系学部や多子世帯などに限定されている。私大連は、学問分野や世帯状況といった属性に関わらず、すべての所得中間層へ支援を拡大するよう継続して求めている。