動き出した政策に現場の視点を
私立大学の実態に根ざした制度の改善
1.改正労働契約法の特例措置の実現
2013年、雇用の安定を目的に労働契約法が改正され、有期労働契約が通算5年を超えた場合に無期雇用へ転換できる仕組みが導入された。しかし、私立大学の教育研究は多くの兼務教員に支えられている他、有期プロジェクトも多く、一律の法運用は教育現場の実態にそぐわないものであった。これに先駆け私大連は、弁護士を交えた専門プロジェクトを編成。会員法人の雇用実態を徹底調査した上で対応策を検討し、教育研究の質を確保すべく教員や研究者を対象から外すなどの弾力的な運用を国に要望した。
この働きかけが実を結び、2014年には研究者・教員については無期転換申込権が発生するまでの期間を5年から10年に延長する特例が設けられるなど、実態に即した制度改善を実現へと導いた。
2.東京23区の大学定員規制に対する反対運動を展開
2018年、全国知事会等の要望を受けて、東京一極集中の是正を目的とした「地域大学振興・若者雇用促進法」が公布され、東京23区内における大学の新増設や学部新設、定員増が厳しく規制されることとなった。
これに対し私大連は、真の地方創生には「大学の規制」ではなく「雇用の創出」こそが不可欠であると早々に表明。地方大学への積極的な財政支援や、地方・大都市圏間の大学間交流による人的な好循環の創出を訴え、政府や与野党関係者へ精力的な働きかけを行った。その結果、かねてより定員増を計画していた大学への配慮や、留学生・社会人を対象とした例外措置を講ずることができた。
さらに、同法の見直しに際しても改めて反対運動を展開。規制効果を厳格に検証すべきであると主張し、「スクラップ・アンド・ビルド」の枠組みでは将来を見据えた大胆な大学改革は困難であると強く訴えた。こうした働きかけにより、2023年には、国策として対応すべきIT・デジタル人材の不足解消に向け、理工農系分野における定員増の緩和措置が実現した。
3.『高等教育政策に対する私大連の見解』を発信
私立大学は自由な発想に基づく多様な教育研究を展開し、日本社会の発展に寄与してきた。その基盤は、私立学校法第1条が定める「自主性の尊重」と「公共性の向上」にあり、国による法的保障の下で固有の「特性」を発揮してきた。しかし近年、大学の特性や独自性を揺るがしかねない政策が相次いで提示されている。これに対し、私大連は会長をはじめとする役員らが結束し、「高等教育の無償化」「認証評価システム」「東京23区の大学定員規制」に関する見解を公表。記者会見を通じて広く社会へ発信し、一連の政策議論に一石を投じた。
4.大学入学者選抜のあり方への意見
「大学入学共通テスト」は、大多数の高校生が受験しており高校教育や学習のあり方に多大な影響を及ぼす。しかし、従来国立大学を中心に設計されてきた経緯から、私立大学にとっては活用しにくい側面があるため、私大連は実施時期の前倒しをはじめとする改善を継続的に求めてきた。例えば、これからの文理横断教育に不可欠な「情報」などの試験を私立大学が有効活用するには、共通テストと一般入試の間隔を十分に確保する必要がある。
質の高い共通テストを「基礎学力を測る試験」として位置づけ、各大学が一般入試で特色ある選抜を行うことこそが求められる。AI人材の育成・確保が国家の急務であるならば、高大接続の要である入試改革そのものを抜本的に見直すことを私大連は常に主張している。