自律するガバナンスを
透明性と説明責任で社会の信頼に応える
1.長期的視点により学校法人経営を継続的に考察
私大連は、18歳人口の減少に伴う経営環境の悪化や、私立大学の統合・撤退といった課題の深刻化を早期から予見し、積極的な提言を行ってきた。2002年には『学校法人の経営困難回避策とクライシス・マネジメント』、翌2003年には『学校法人の合併と経営破綻した大学の学生への支援策』を公表した。
さらに、2010年には『学校法人経営の充実・強化に向けて』を取りまとめ、会員法人へのアンケート調査を通じて、定員充足の要因や学生確保を阻むリスク要因を多角的に分析した。本報告書では、従来の「危機の回避」から「強みの伸長」へと議論の転換を図り、定員割れから経営再建を果たした8大学へのヒアリング調査を基に、具体的なグッド・プラクティスを提示して会員法人の経営改革をけん引した。
2.『私立大学ガバナンス・コード』の策定(2019年)
私大連の存在意義は会員法人の自主性の確保にあり、一律の規制を課すものではない。しかし、近年の環境変化と社会的要請に応えるべく、2019年に会員法人のメンバーシップによる『私立大学ガバナンス・コード』を策定した。本コードは各大学の自律的なガバナンス体制の構築を後押しすることを主眼としており、「コンプライ・オア・エクスプレイン(遵守、さもなければ説明)」の原則を導入することで、建学の精神に則った柔軟な改革を可能にしている。
策定後も専門委員会による継続的な見直しと改訂を重ねており、現在では会員法人に対して遵守状況の公表を義務付け、各法人がステークホルダーへの説明責任を果たし、私学経営の健全性と透明性を高める基盤となっている。
3.「私立大学の情報公表」を公表
私大連は、社会的な信頼性を高めるべく、会員法人による主体的な情報公表を推進してきた。2022年には「私立大学の情報公表」をとりまとめ、自律性、公共性、信頼性・透明性、継続性の4つの観点から、教育・研究・経営の状況を社会へ明瞭に発信する指針を示した。私大連のガバナンス・コードの遵守状況を自主的に公表する仕組みも、この方針の延長線上にある。
私立大学が公教育の一翼を担い、公的支援を受ける組織として社会の負託に応える以上、自らの活動を説明責任の下に開示していくことは、ガバナンスの根幹をなす不可欠な取り組みであり、私大連はこの取り組みを推進する。
4.私立学校法改正への対応と私大連の役割
2023年の私立学校法改正は、相次ぐ学校法人の不祥事防止と社会的な信頼回復を目指し、意思決定機関の役割・権限の明確化と「相互けん制」の強化による「実効性のあるガバナンス改革」を目的として行われた。
この過程において、私大連は法改正の趣旨を深く理解しつつも、私立学校が持つ独自の「公共性」と「独自性」が担保されるよう、社会の理解を得られる適切な「相互けん制」の構築を主張した。また私大連は田中会長(当時)の強いリーダーシップの下で文部科学省、国会議員、マスコミ等への全方位的なアプローチを展開。2022年3月には、幼稚園から大学までで構成する全私学連合共通の「ガバナンス改革に関する基本的考え方」を、私学のリーディング団体として中心的に取りまとめ、政府・与党へ提言した。
その結果、大規模な改革となった同法には全私学連合の主張が大方反映され、2023年に成立・公布された。